「黒澤明の弁護士」乗杉純著
黒澤明の「影武者」の配給権の交渉などを担当していた著者に、1989年、黒澤プロダクションから依頼がきた。東宝は1958年に「七人の侍」の再映画化権をアルシオナ・プロダクションズに譲渡していたが、黒澤明、橋本忍、小国英雄が再映画化権は脚本家にあると主張したのだ。
東宝は与えられた物権的映画化権に基づいて何本でも映画を製作できると主張したが、脚本家たちは当時の慣行から東宝に許諾したのは1本の映画を製作する権利のみだと反論した。1978年、東京地裁は、東宝のアルシオナ・プロダクションズへの再映画化権の譲渡は無断譲渡だという判決を下した。
弁護士が黒澤映画をめぐるエピソードを紹介する回想記。
(草思社 1870円)