「図書館の子」佐々木譲著
「図書館の子」佐々木譲著
昭和12年の夏の夜、宿直中の医師・児島は、上空から見たこともない光の玉が隅田川の水面に落ちていくのを目撃する。10分後、隅田川の水面に浮かんでいたという男が病院に運び込まれる。通りかかった蒸気船の船長が引き揚げたらしい。診察すると、意識はないが大きなケガはないようだ。
翌朝、意識を取り戻した男に事情を聴くと、自分の名前や職業も答えられず、記憶を失っているようだ。児島は、男に職を紹介し、ゆっくり記憶を取り戻すよう励まし退院させる。8年後、児島はひょっこり訪ねて来た男に3月9日は仕事を休んで家族と田舎に行くように説得される。(「遭難者」)
ほか、吹雪の夜に図書館で仕事帰りの母を待つ少年の体験を描く表題作など、時空を超えたタイムトラベラーたちが登場する作品集。 (光文社 770円)