「その昔、ハリウッドで」クエンティン・タランティーノ著 田口俊樹訳
「その昔、ハリウッドで」クエンティン・タランティーノ著 田口俊樹訳
「ウィリアム・モリス・エージェンシー」のマーヴィン・シュワーズを俳優のリック・ダルトンが訪れた。殴られ役ばかり演じているリックの将来を案じたエージェント、シドに指示されたのだ。
マーヴィンはスティーヴ・マックイーンに似ているリックを、イタリア映画界に売り込もうと考えていた。テレビで悪役ばかり演じるより映画の主役を夢見ていたリックは、それを聞いて涙を流した。戸惑うマーヴィンに、リックは、10年以上俳優を続けてきて自分が失敗したという現実と向き合うのは簡単なことではないと言った。会社が落ちぶれた連中とばかり共演させて、自分の可能性をつぶしたと。
「レザボア・ドッグス」などで知られる映画監督のタランティーノがハリウッドを舞台に描いた初めての小説。
(文藝春秋 3025円)