「極楽 征夷大将軍」垣根涼介著
「極楽 征夷大将軍」垣根涼介著
後醍醐天皇の勅命を受けて、足利尊氏は鎌倉幕府を倒した。ところが政権に返り咲いた後醍醐天皇は足利氏に政権を委ねる気などなかった。天皇は自分が直接この国を治めることを宣言する。足利家の重臣、高師直は謀られたと悟り、呆然とする。
平時の軍務に関心がない尊氏は京の治安の悪化に対処する気はなく、六波羅に陣取る豪族の赤松円心に軍政の主導権を譲ろうとした。だが円心は播磨の豪族で、無位無冠の老人にすぎない。尊氏が頼りにならないことを悟った師直は、尊氏の弟、直義を立てて、尊氏抜きで新しい幕府をつくろうとするが……。
足利尊氏を意外な人物像に設定して描いた時代小説。第169回直木賞受賞作。
(文藝春秋 2200円)