「時々、死んだふり」横尾忠則著
「時々、死んだふり」横尾忠則著
今年、87歳となった美術家によるエッセー集。
昨夏、著者は今まで経験したことがない胸の痛みに襲われる。その痛みは、このまま絶命したほうが救われると思うほどの強烈な痛さだった。だが、不思議と死への恐怖は感じなかったという。救急車で搬送され、緊急手術。急性心筋梗塞だった。手術室に向かう著者の心を落ち着かせてくれたのは、手術室に入る直前、横たわる夫を真上からのぞいて、うれしそうに笑って「バイバイ」と手を振る妻だった。もうこの世で会えないというお別れなのか、それともまた後でなのか、どちらのバイバイなのか、分からなかったけど、その笑顔に落ち着いたという。
その体験で変わったという絵との関係や、死後の世界についての自らの考えなど、人生や創作について現在地を語る。
(ポプラ社 979円)