「わかりやすさの罪」武田砂鉄著
「わかりやすさの罪」武田砂鉄著
あらゆる場面で、短時間で明確な説明ができる人がもてはやされ、世の中が「わかりやすさ」に直進していることに苛立ちを覚える著者が、その「わかりやすさ」への妄信が社会にどのような影響を与えているのかを考察したエッセー集。
テレビで見た「一家の財布は夫が握るべきか、妻が握るべきか」のアンケート結果を例に、自身は選択肢が嫌いだと斬る。選択肢を並べられると、どれを選ぶかよりも、なぜその選択肢を投じてきたのかを精査したくなってしまうと。
そして世論調査の設問を例に、人々に選択させることの恐ろしさを指摘する。その上で、選択肢を前にしたときは選択する前に、ほかに選択肢はないのかと考えることを勧めるなど。
納得と共感を強要する世の中を見回し、「わかりにくさ」の大切さを説く。
(朝日新聞出版 946円)