読んですっきり人生の迷いに効く本

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「生きるとはどういうことか」養老孟司著

 長い人生の中では、目標を見失ったり、自分が無価値に思えるなど生き方に迷う瞬間に出くわすこともある。そんなときに“読む薬”となりそうな4冊をピックアップ。生きることや人生の意味について問い直す助けとなれば幸いだ。

 ◇ ◇ ◇

「生きるとはどういうことか」養老孟司著

 あるとき、いつも通る道に花が咲いていることを発見する。この時点で昨日までの自分とは違う自分になっており、ささいな喜びを感じる。そういう体験を繰り返したくなることが、人生の喜びではないか。

 本書は過去20年間の作品から選りすぐり、“人生とは何か”を問う随筆集だ。

 幼い頃から無類の虫好きの著者は、現在でも虫を採集し、標本を作っては眺めている。多くの人の感想が「虫なんか見て何が楽しいの?」だろうし、自分でも虫の面白さを説明しようとすると言葉に窮するという。しかし、人生は言葉にならないことこそが一番楽しいのではないかと考察する。

 何しろ、夢中になれることが目の前にあれば、言葉にしている暇なんかない。懸命に生きるとはそういうことで、自分に言わせれば「虫も見ないで、人生、何が楽しいの?」であると著者。

 生きること、その喜びを見いだすことは、意外とシンプルで簡単なことだと教えられる。 

(筑摩書房 1760円)

「自分を否定しない習慣」小澤竹俊著

「自分を否定しない習慣」小澤竹俊著

 著者はホスピスなどで4000人以上の患者を看取ってきた医師。本書では多くの患者の最期から、どんなときでも「これでよい」と納得して生きていくための方法を学ぶ。長い人生の中では、「自分は役に立たない人間だ」と思い込んでしまうこともある。これは自身を否定している状態であり、抜け出すためには“幸せの基準”を変えることが重要だと本書。

 あるとき著者が関わった50代の患者は、肺がんで余命半年と宣告されていた。それまで営業マンとして仕事に心血を注いできたため、働けなくなった自分に価値はないと絶望していたという。しかし、家族との触れ合いの中で、自分の人生で得た教訓を大切な人たちに残すという幸せを見いだし、以降は生き生きとした表情を取り戻していったという。

 自分を支えてくれる存在に気づく、変えられるものと変えられないものを見極めるなど、人生を否定する思考を捨てる生き方が分かる。  

(アスコム 1540円)

「人生に『意味』なんかいらない」池田清彦著

「人生に『意味』なんかいらない」池田清彦著

 生物学者である著書が、意味のないものが多い自然界の例を挙げながら、「人生に意味を求める病」を手放す生き方を提案する。

 生物の構造には、生きるために何らかの意味があると考えがちだ。例えば、トラのしま模様は森林で隠蔽色の役割を果たし、獲物を捕らえやすくしていると意味付けされている。しかし、これが本当ならばホワイトタイガーは生きていけないし、そもそもトラは夜行性のため、体色が捕食効率に貢献しているとは考えにくい。

 研究が進んでいるはずの人間の構造でも意味不明なものが多い。“大切な部分を守る”とされる陰毛も、あの程度の毛で守れるはずはなく、高齢者にお馴染みの剛毛の耳毛に至っては何の意味もないと著者。

 ユニークなエッセーだが、人生に意味を求めすぎることは、とくに中高年期に虚無感に襲われるミッドライフクライシスを招きかねないとも警告する本書。無意味で無駄でもいいのだと、心が軽くなる。 

(フォレスト出版 1815円)


「あやうく、未来に不幸にされるとこだった」堀内進之介、吉岡直樹著

「あやうく、未来に不幸にされるとこだった」堀内進之介、吉岡直樹著

 人生の“不安”の多くは根拠がなく、人は起こりもしない未来に心をすり減らしていると説く本書。ペンシルベニア州立大学で実施された実験では、参加者が記録した心配事の実に91.4%が、追跡調査をしても実際には起こらないものだったという。

 この数字を見ても「8.6%は起こっているではないか」と思う人もいるだろう。しかし、不安に支配されず今を幸せに生きるコツはある。

 例えば、未来を気にしすぎて行動できなくなっているなら、自分の状態が①リラックス②チャレンジ③ストレスのどれかを見極めればよい。

①今はしていなく「ても」いつでもできる

②今はしていない「けど」いつかやってみたい

③今はしていない「のに」将来もできるとは思えない

 ①か②なら現状維持か様子見でいいが、③ならすぐに行動に移すのがよいといった具合だ。

 今までと違った行動をする、現在の意識に集中するなど、不安から解き放たれるヒントが満載だ。 

(東洋経済新報社 1650円)

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