「風神の手」道尾秀介著
「風神の手」道尾秀介著
15歳の歩実は、母の奈津実に付き添い遺影専門の写真館、鏡影館を訪ねる。病で死期を意識した奈津実は、歩実以外の家族に内緒で終活を進めているのだ。撮影前、店内に飾られていた遺影を見ていた奈津実の表情が変わる。店の人にたずねると、その遺影の人は奈津実の思った通り崎村さんだった。歩実がなぜか遺影を撮らず帰路についた母にたずねても、崎村が誰か教えてくれない。
奈津実が崎村と出会ったのは27年前の火振り漁の夜だった。父が営む会社が不祥事を起こし倒産。引っ越すことが決まっていた高校2年の奈津実は残りの数カ月、農業と川漁師を兼業する崎村と交際していたのだ。
保身のためのささやかな嘘が積み重なり、登場人物たちの人生を左右する長編ミステリー。 (新潮社 1045円)