「室町ワンダーランド」清水克行著
「室町ワンダーランド」清水克行著
1480年、室町幕府8代将軍足利義政は千本釈迦堂で行われた法事の参列を終え、牛車に乗った。途中で護衛役の侍が異変に気づき、牛車の中をのぞいたら、義政の姿がない。パニック状態になった供の者が千本釈迦堂まで戻ると、義政がぽつんと立っている。義政の話では、乗ろうとしたら既に牛車がいなかったという。
では、あのとき、乗った義政は何者だったのか。
この件に衝撃を受けた義政は、自分の命はもう長くないと死を覚悟した。この逸話は世界最古のドッペルゲンガー伝説ではないか。
ほかに、小野小町や紫式部が「古事談」などで悪く書かれた理由など、意外な裏側を伝えるエッセー。 (文藝春秋 1760円)