「古池に飛びこんだのはなにガエル?」稲垣栄洋著
「古池に飛びこんだのはなにガエル?」稲垣栄洋著
松尾芭蕉の「古池や蛙(かわず)飛びこむ水の音」は小学生でも作れそうな俳句に見えるが、当時はこの俳句はとても斬新だった。「蛙」は「山吹の花」とセットだったのに、芭蕉は「山吹」ではなく「古池」という、風流でもなんでもない平凡な言葉と取り合わせた。
また「蛙鳴く」も、当時は清流で美しい声で鳴く「カジカガエル」が一般的だったのだが、芭蕉が詠んだのは「ツチガエル」らしい。だが、この句の中に実は蛙の姿は登場しない。詠まれているのは「水の音」であり、「静けさ」なのだ。
ほかに「恋しくば尋ねきてみよ和泉なる信太(しのだ)の森のうらみ葛の葉」(作者不詳)など、生き物を詠んだ短歌や俳句を、生物学者が読み解く。
(辰巳出版 1650円)