「奪還」城内康伸著
「奪還」城内康伸著
1945年8月、それまで植民地だった朝鮮半島にいた日本人は、日本の敗戦によって「難民」となった。当時、北緯38度線以北にいた日本人は約25万人、さらに満州から7万人の避難民がなだれ込んだ。役人や有力者は民間人を見捨てて逃げた。残された人びとは侵攻してきたソ連兵の暴虐や飢餓、疫病などで次々と死んでゆく。
朝鮮第210部隊の2等兵だった松村義士男は鉄道による移送と並行して海路による脱出を計画した。46年4月、漁船での海路輸送を成功させた松村は、「大集団渡航工作」に着手する。
一介の2等兵ながら6万人もの在留邦人を脱出させた男を描くノンフィクション。
(新潮社 2090円)