著者のコラム一覧
金井真紀文筆家・イラストレーター

テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て2015年から文筆家・イラストレーター。著書に「世界はフムフムで満ちている」「パリのすてきなおじさん」「日本に住んでる世界のひと」など。

「世界のパッチワーク」カトリーヌ・ルグラン著、石上美紀監修

公開日: 更新日:

「世界のパッチワーク」カトリーヌ・ルグラン著、石上美紀監修

 1年ほど前、突発性の「編み物熱」に罹患した。毎朝目が覚めると、かぎ針を手にせずにはいられない。原稿を書いたり打ち合わせをしていても「あぁ、早く終わらせて編み物したい」とうずうずしてくる。手持ちの毛糸在庫が切れてしまうのが怖くて、100円ショップに毛糸を買いに走ることもしばしば。中毒症状は数カ月続いたのちにパタリとやんだ。熱が冷めた今も、手芸をすると気分が落ち着く、あの感覚だけは残っている。

 古今東西、人類は編んだり縫ったりしながら気持ちを落ち着かせてきたのだろう。たぶんパッチワークもそのひとつ。アフリカでは男性の職人が、欧米ではご婦人たちが、小さな生地をチクチクと縫い合わせて作品を生み出してきた。

 本書は世界のパッチワークに魅せられたフランス人デザイナーのコレクションをまとめたディープかつ豪華な一冊。33カ国の多様なパッチワークに胸が躍る。カラフルな衣装から縫い目のアップまで、掲載写真がどれも美しい。もともとは端切れの再利用や衣服の繕いのために始まったパッチワークが、布教の一環としての裁縫教室、社会にメッセージを伝えるプロテスト・キルト運動などに展開していく経緯も興味深い。

 わたし自身の手芸ブームはあっけなく去り、裁縫関係の本は一冊も持っていない。ので、本書は自室の「世界棚」に置くことにしよう。世界の市場を描いた絵本、世界のことわざを比較する辞典、世界の刑務所についてのノンフィクションなどと並べて悦に入る。世界を旅するように本を読むこの連載は本日が最終回です。でもまだまだ旅は続くよ、どこまでも! (グラフィック社 3960円)

【連載】金井真紀の本でフムフム…世界旅

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ30代アナ永島優美、椿原慶子が辞めて佐々木恭子、西山喜久恵50代アナが居座る深刻

  2. 2

    志村けんさん急逝から4年で死後トラブルなし…松本人志と比較される女性関係とカネ払い

  3. 3

    ダウンタウン浜田雅功の休養でよぎる2023年の「意識障害」報道…「前日のことを全く記憶していない」

  4. 4

    男性キャディーが人気女子プロ3人と壮絶不倫!文春砲炸裂で関係者は「さらなる写真流出」に戦々恐々

  5. 5

    悠仁さんの成人会見は秋篠宮家の数々の危機をいっぺんに救った

  1. 6

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  2. 7

    志村けんさん急死から4年で関係者が激白…結婚を考えた40歳以上年下“最後の女性”の存在

  3. 8

    備蓄米放出でもコメ価格は高止まり…怪しくなってきた農水省の「実態把握」

  4. 9

    日テレ「さよなら帝国劇場」でわかったテレビ軽視…劇場の階段から放送、伴奏は電子ピアノのみ

  5. 10

    フジテレビ「Live News イット!」が大苦戦中…上垣皓太朗アナが切り札となるか