ちかごろの静かな若者

公開日: 更新日:

「静かに退職する若者たち」金間大介著

 反抗的ではないが反応も薄く、なにを考えているのかワカラナイ。ちかごろの若者論。



「静かに退職する若者たち」金間大介著

「ちかごろの若いモンは」は古代ギリシャでも決まり文句だったそうだ。だが、現代はなにを考えているのかわからないまま、ある日突然「ボク、会社辞めます」と言ってくる若者たちが急増しているという。

 そんな世の中の痛点にぐさりと刺さるのがこの書名。中間管理職なら書店で思わず手に取りたくなるだろう。企業や勤務先で通例の「ワン・オン・ワン」。1対1での面談は若い部下とのコミュニケーションに必須といわれるが、仲良くなることと勘違いする上司は少なくない。仲良くなるのではなく信頼関係の構築が大事なのだが、著者はズバリ「(上司の)年齢が上がれば上がるほど、この区別がつきにくくなっている」という。

 著者は物理学で博士号を取得しながらアメリカ留学中に当時最先端の「イノベーション・マネジメント」論に魅了され、専門を変えたという金沢大教授。学生と接する経験もふまえ、ちかごろの若者は「いい子症候群」と指摘する。目立ちたくない、人前でほめられるのが「圧」。オススメの資格は自分の目標次第というと「お話ありがとうございました」と丁寧に挨拶し、「どんな目標にどんな資格が有効か教えてください」と来るのだそうだ。

 ではどうすればいいか。その答えは本書で(笑)。 (PHP研究所 1870円)

「離職防止の教科書」藤田耕司著

「離職防止の教科書」藤田耕司著

 人手不足はいぜんとして深刻。若手の離職を止められなかった上司が人事考課で降格されるなどが普通の現実だ。本書は、大手会計事務所勤務の経験がある公認会計士・税理士かつ経営心理士の資格も持つという著者が離職防止を指南する。

 必要なのは「4つの欲求」に訴えること。第1は生存欲求。部下は上司の働き方を見てその職場での未来を判断する。第2は関係欲求。人間関係が原因の離職は本音を言わないので問題の所在がわかりづらい。第3は成長欲求。転職サイトのキャッチフレーズも「成長」だ。そして第4が「公欲」。働く喜びの根底にあるのはやりがい、つまり社会に役立っているという自覚だ。

 第6章では年代と意欲・能力別の離職防止策を伝授するなど、きめ細かさが持ち味だ。 (東洋経済新報社 1980円)

「電話恐怖症」大野萌子著

「電話恐怖症」大野萌子著

 職場で自分の目の前の電話が鳴るとギクッとする若手。自分から取引先にかけるのも苦手で、できるだけ周囲に聞かれたくないという。

 本当の話? と疑う人は本書の著者に聞けばいい。産業カウンセラーとしてあちこちの企業に出かける著者は、ある出版社で筆者に電話する若手の社員が、廊下の片隅でしゃがみ込むような姿勢でひそひそと小声でスマホに向かう姿を目撃したという。著者によれば職場での雑談が減り、隣席の同僚とさえオンラインのチャットで会話する世の中になったのも一因とする。

 もちろん現状の分析だけでなく、本書は終章で電話のかけ方も指南する。たとえば謝罪の電話では「すみません」では伝わりにくい。「申し訳ございませんでした」のほうがよいなど具体的なアドバイスが並ぶ。 (朝日新聞出版 924円)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    相撲協会の逆鱗に触れた白鵬のメディア工作…イジメ黙認と隠蔽、変わらぬ傲慢ぶりの波紋と今後

  2. 2

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    《2025年に日本を出ます》…團十郎&占い師「突然ですが占ってもいいですか?」で"意味深トーク"の後味の悪さ

  5. 5

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  1. 6

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  2. 7

    結局《何をやってもキムタク》が功を奏した? 中居正広の騒動で最後に笑いそうな木村拓哉と工藤静香

  3. 8

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 9

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 10

    高校サッカーV前橋育英からJ入りゼロのなぜ? 英プレミアの三笘薫が優良モデルケース