「落としの左平次」松下隆一著
「落としの左平次」松下隆一著
清四郎は、定町廻り同心になって3年だが、手柄もなく、奉行所では見習い同然の扱い。そんなある日、清四郎は上役から左平次の預かりとなったと告げられる。同心株を売り、今は町人の身分の左平次だが、廻り方として奉行所随一の腕を持ち、神と呼ばれていた男らしい。番所の仕事が立て込み、一時、左平次の手を借りることになったので、清四郎に修業させるつもりのようだ。
納得できないまま、清四郎は八丁堀幸町の番屋に向かう。左平次は、番屋でほとけの検分中だった。到着早々、清四郎は左平次から顎で使われ面白くない。一方、ほとけは紅白粉問屋の女中で庭の木で首を吊っていたというが、清四郎が見てもすぐに殺しだと分かった。
「神様」のもとで悩み、格闘する若き同心の成長を描く連作時代小説。 (角川春樹事務所 814円)