北沢拓也「特命情事社員」(1992年・ゲイブンシャノベルズから)
【あらすじ】東西不動産の開発課課長補佐・徳光正弘は、好色な男だった。本社内では、平岡社長派と深谷専務派の派閥争いがあり、中間派の徳光は深谷専務の策略にはまり同派へ。さらに、深谷から特命を受ける。「東西不動産で働く女子社員の中から名器の娘を探し出せ」と。徳光は自慢のモノを武器に次々と女子社員を誘うのだった――。
◇
「好きなのか、男のものをしゃぶるの?」
「嫌いじゃないわ。男性がよろこぶことをしてあげるのって、わりと好きなひとなのよ、わたしって」
シックな紺のスーツに身を包んだ美人秘書の背が前屈みに徳光の腰に沈み、桜の花のような唇が、真上から彼の亀頭部に被さった。
右手の指で根もとのごつごつしたあたりを軽くつかみ、真上から被せた唇を深くすべりおろしてくる。
「むうう……」
喉をすぼめてなまあたたかい口のなかで硬直を締めつけられると、徳光は息を弾ませうめきをこぼした。
深く降りていた唇許が今度は浅くすべりあがり、また深く沈んでくる。
亜沙美の硬直に貼りついた二枚の桜色の花びらのような唇がもちあがっては沈み、またもちあげられるとき、徳光の肉の柱が女の唾液に磨かれ、てかてかと光った。
専務付の美人秘書は、ときおり舌をからめながら小さな音をたてて徳光の張りつめた先端部を吸った。
甘い痺れが徳光の股の間を何度か襲った。
白石亜沙美は、湿った音をたてて徳光を強く吸うと、つるりと彼を口のなかから吐き出した。
「いかが?」
顔をもたげて、小さな声で徳光に尋ねる。
(中略)
亜沙美も全裸になっていた。
唇の奉仕をやめ、彼女は上半身を立てて、
「上になってあげるわ。……今夜は思いきりスケベになって愉しみたいから」
上ずった声音で言い、白石亜沙美は徳光の腰に打ち跨ってきた。
(中略)
亜沙美は、仰臥した徳光の腰に跨り、彼の怒張を浮かせた腰の底に自らの手で導いた。
黒々と艶光りした漆黒の濃い繁みが白い肌とは対照的で淫らである。
白石亜沙美は、徳光の硬直をその濃くそよぐ繁みの奥へと導いていった。
(構成・小石川ワタル)
▽きたざわ・たくや 1940年、東京生まれ。中央大学卒。出版社、広告代理店などに勤務の傍ら倶楽部雑誌に小説を発表。スポーツ紙に連載した官能小説で人気を得る。以後、エンターテインメント小説を次々発表し、人気作家になる。08年、68歳で没。