「しくじりの原因はたいてい酒」九蔵時代は23回も破門に
「談志師匠の口上がいいんですよ。あの師匠にもよくしていただきました。うれしい昇進でしたが、その4カ月後に彦六師匠が亡くなってしまうんです」
その1年後、九蔵は先代円楽の門下に移籍する。当時の円楽一門は落語協会を脱会したことで寄席に出られず、独自の興行を催していた。
「1年間は喪に服して、翌年に移ったんですが、『何も大企業から町工場に移ることはない』と言われました。円楽師匠には可愛がってもらっていたし、自分が師事するのにふさわしい落語家と思ってましたから、どんな陰口も気になりませんでしたけどね」
当時は「笑点」のレギュラーを降ろされ、落語家として岐路に立っていた時期でもあり、九蔵としては一大決心であった。円楽一門に移るにあたり、芸名を三遊亭好楽と改める。
「これまでみたいに寄席に出られないので、自分で落語をやる場所を開拓しました。その当時の苦労が、<しのぶ亭>をつくったことにつながったのかもしれませんね」
(つづく)
▽さんゆうてい・こうらく 1946年、東京生まれ。66年、8代目林家正蔵に入門。林家久蔵を名乗る。71年、二つ目昇進。81年、真打ち昇進。82年、三遊亭円楽の門下に移り、三遊亭好楽となる。現在は円楽一門会会長。今月23日、3番弟子の三遊亭好の助の真打ち披露公演が有楽町よみうりホールで開催。