父・木久蔵が好きな言葉は「入金」嫌いな言葉は「税金」
「そう。税金は大嫌いで、お金が入るのと何かもらうのが大好きなんです」
木久扇の経済観念は、最初の師匠の3代目桂三木助と、没後に師事した先代林家正蔵(後の彦六)から影響を受けたという。
「三木助師匠は美食家で贅沢をしてました。死んだ後の家族のことを考えてアパート経営をするような堅実なところもありました。それに対して正蔵師匠は、ご存じの通り長屋住まいで清貧を信条としてました。金銭には淡泊でした。たとえばギャラを20万円もらうと、多すぎると言って10万円返しちゃう。その中にはお付きの弟子や前座のギャラも含まれているのにです。興行主が喜んでまた仕事を頼んでくるという利点はありますけど、僕は内心おかしいと思ってました。だって、当時円生師匠が30万、50万のギャラを取っていたんですから。僕が売れるようになって師匠の仕事の仲介をする際、ギャラの交渉をして上げてもらいましたよ」
経済観念こそ違ったものの、木久扇は師匠を敬愛している。だから師匠の没後に「彦六伝」という誰にも受ける新作落語の名作ができたのだ。