舞台「外地の三人姉妹」は過去が題材だが、その描く先には未来がある
本作が2020年12月にKAAT(当時の芸術監督は白井晃)で初演されて以来、3年ぶりの再演に至った経緯にも注目したい。パンフレットによれば、現芸術監督の長塚圭史は、初演時は同劇場の(次期監督就任を前提とした)芸術参与の立場で、本作に烈しく心を動かされ「然るべき時に再演すべき作品」とはっきり認識していたという。
つまり今が「然るべき時」。2023年は、世界に蔓延し支配してきた旧いルールの終わりを感じさせる出来事が頻発した。国内外でだ。その年の暮れに再演時期を設定した長塚さんの視点、それ自体が社会時評として機能することは、ぼくが贅言を尽くすまでもない。過去が題材の舞台だが、その描く先には未来がある。
■浮かび上がる平田オリザのシルエット
さらにその向こうには、チェーホフと日韓文化交流の双方に通暁した先達・平田オリザのシルエットが浮かび上がって見えた。ぼくの気のせいだろうか。奇しくも本作公演中の12月1日、オリザさんが父親の代から運営し、若手演劇人のサポートでも知られてきた〈こまばアゴラ劇場〉の来年5月閉館が、同劇場ホームページで発表された。そこには経済的理由があることも詳らかに記されていた。カタチを変えても続く志を信じたい。