毎年2万人超が発症、2000人死亡 日本は「結核中進国」
発症してすぐ治療が開始されれば、“不幸中の幸い”でまだ済む。ところが、そうはいかない。
「結核の5大症状は、咳(せき)、痰(たん)、血痰、発熱、胸痛です。これらはありふれた症状のため、見逃されやすい。咳や痰などの症状はほとんどなく、だるさや食欲不振だけでは、高齢者の場合は〈年のせい〉と思われてしまうこともあります」
結核の発症を知らずにこれまで通りの生活を続けると、本人の病状が悪化していくのは当然として、もっと怖いのは、結核菌の周囲への感染だ。
「結核を発症した高齢者から家族、介護従事者、医療従事者などに感染します。彼らの中に感染から発症に至った人がいて、それに気が付かなければ、彼らの職場、交通機関、コンビニや漫画喫茶といった公共の場で不特定多数の人にうつしていくことになる。それこそ、結核菌のバトンタッチが次々に行われるのです」
結果、結核がすたれない。さらに、結核に詳しい呼吸器内科医が激減していることも問題だ。
「〈ワシントン条約の保護職種にしてほしい〉とよく冗談で言うのですが、結核が専門の医師は多くありません。結核患者を30年近くも診ている私ですら、胸のレントゲンだけでは診断に迷うケースが多く、喀痰(かくたん)検査が必要です。専門外の医師では、症状から結核に考えが及ばないことが珍しくありません」