専門である肝臓がんなら受け入れられるかもしれない

公開日: 更新日:

■同業者の妻に「病名は告知しないで」

 自分で言うのもなんですが、実は病名の告知も受けたくありません。同業者である妻には「告知はしないでほしい」と話しています。下手なウソに乗りたい。そして、つらくないように、うまく逝かせてくれればいいと思っています。ぜいたくを言わせていただければ、ほどよい年齢で、家族にみとられながら死ぬのが理想的ですね。妻に先立たれ、一人残されるのは、やはりつらい。

 がんには、さまざまな「苦痛」があります。肉体的苦痛、精神的苦痛、社会活動に参加できない苦痛、スピリチュアルペインなどです。緩和ケアというと「末期から」との認識が強いですが、本来はがんと告知された瞬間からのもの。早い段階では精神的なサポート、それが徐々に肉体的なサポートへと重点が移行していくものなのです。

 痛みや苦しみがなく、そして周囲に支えられながら人生を全うする。私自身そうありたいですし、患者さんにもそういった医療を心掛けていきたいと思っています。

▽おび・しゅんたろう 1965年生まれ。91年帝京大学卒業。東京大学名誉教授の小俣政男氏(消化器内科学専門)の下、進行肝がんの臨床に打ちこむ。佐々木研究所付属杏雲堂病院肝臓内科科長などを経て、2016年から母校に戻り、後進の教育と地域医療を担っている。日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、東京大学医学部非常勤講師、香川大学医学部非常勤講師。

【連載】医師語る 「こんな病気で死にたい」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    岡田阪神は「老将の大暴走」状態…選手フロントが困惑、“公開処刑”にコーチも委縮

  2. 2

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  3. 3

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  4. 4

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  5. 5

    中日・根尾昂に投打で「限界説」…一軍復帰登板の大炎上で突きつけられた厳しい現実

  1. 6

    安倍派裏金幹部6人「10.27総選挙」の明と暗…候補乱立の野党は“再選”を許してしまうのか

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    79年の紅白で「カサブランカ・ダンディ」を歌った数時間後、80年元旦に「TOKIO」を歌った

  4. 9

    阪神岡田監督は連覇達成でも「解任」だった…背景に《阪神電鉄への人事権「大政奉還」》

  5. 10

    《スチュワート・ジュニアの巻》時間と共に解きほぐれた米ドラフト1巡目のプライド