体内の“炎症”を抑えれば重大病リスク減? 欧州学会で報告
「今回の研究の狙いはアテローム性動脈硬化症患者を対象に、『カナキヌマブ』と呼ばれる抗炎症薬が心血管イベントの再発を減らすかを調査することです。背景には、脳梗塞や心筋梗塞の引き金となる動脈硬化の原因は持続的な炎症にあるとする『炎症説』の存在があります」
■重大病克服の糸口を得たのか?
動脈硬化は、これまで肉などの脂っこいものを多く食べることで血管内に脂質が沈着して起こるとする脂肪沈着説などが唱えられてきた。しかし、血液内の脂質量を減らしても思うように脳梗塞や心筋梗塞が減少しないことや、これらの病気を発症した人からクラミジア、歯周病菌、ピロリ菌など慢性炎症を起こす細菌が多数見つかったこと、糖尿病など体内に炎症を起こす病気を抱えている人の発症が目立つことなどから「炎症説」が注目を集めていた。
「今回の研究結果はこれを裏付けるものです。実は、5年ほど前にも痛風治療に使われる『コルヒチン』と呼ばれる炎症予防の薬を1日0.5ミリグラム投与すると、急性心筋梗塞や非塞栓性虚血性脳卒中などのリスクを低下させることが米国心臓病学会誌でも報告されています。コルヒチンはスタチンやアスピリン以上の抗炎症作用があるとされています。今回使われた抗インターロイキン―1βは、それ以上の作用があると言われています」