えのきどいちろうさん 続発性の脳腫瘍と「一生付き合っていく」
手術は、開頭手術ではなく、口の中の上唇の付け根を切って、内側から腫瘍を取る経鼻的手術でした。外傷もなく、口の中は再生が早いとのこと。入院は1カ月と言われましたが、ボクは19日で退院しました。
「命に別条はない」と言われたので不安は少なかったのですが、全身麻酔でしたから、麻酔から覚めて母親やカミサンの顔が見えたとき、「生きてるんだ」と思ったのは覚えています。翌日から、もう視界が良くなったことも実感しました。ダメージを受けた体が元に戻ろうとする力を感じられたのもいい経験です。ゲームでたとえると、HPが毎日上がる感じ(笑い)。
ただ、ボクの脳腫瘍は続発性でずっと持ち続けるものらしいです。根っこは常にあって、いつまた腫瘍になるかわからない。実際に手術から5年後にまた膨れてきて、ガンマナイフ治療を受けました。
一生付き合っていく病気を持ったことで、人生の考え方が変わりました。以前は、いくらでも何でもできると思っていたんです。だから、仕事でも遊びでもムチャをしました。でも無限じゃない、終わりはあるんだと思うようになって、将来を軽く悲観しました。病気はある意味“自分のことを諦めた体験”だったんです。