口コミで1万人超が VRで認知症を疑似体験してわかったこと
②は、電車の中で「今どこ? どこに向かっている?」と分からなくなる場面。駅員が「どこに行きたいのか?」と聞いてくれるが、なんて答えていいか分からない。
③は、友人の家を訪れたところから始まる。友人が笑顔で迎えてくれるのだが、ドアを開けたところ、部屋の片隅など、そこかしこに背中を向けて立つ男性、膝を抱えて座る男性……。家主も、そこで待っていた友人2人も気付かない様子だ。視線を動かすたびに“みんなが見えていないもの”が現れるので、ずっと不安で落ち着かない。
①は認知症の中核症状「視空間失認(空間における物の位置や、物と物との位置関係が分からない)」の体験だ。②は若年性認知症の男性の実話から、③はレビー小体病(認知症の一種)の女性の原作・監修で、レビー小体病の症状である「幻視」の世界を伝えている。
①は、あるおばあちゃんがデイサービスの車から降りる時に悲鳴を上げ、その後怒り出したエピソードがもとだ。
「中核症状で距離感がつかめなくなっているのを、私たちは“なぜ降りられないの”となる。ビルの上から笑顔で降りろと言われても、本人にとってはとうていできない。これがもし、『大丈夫ですか?』と聞いていたら、認知症の方もなぜ降りられないかを話せ、安心につながるかもしれない」(VR事業部・黒田麻衣子氏)