無精子症でも精巣から精子を直接取り出せば子供はできる
この治療法によって、原因不明の特発性造精機能障害をはじめ、先天性疾患のクラインフェルター症候群、抗がん剤療法による無精子症の人なども、子供を作る希望が持てるようになったのだ。
手術は基本的に局所麻酔で陰のうを切開し、精巣を一時的に血管がつながった状態で体外に取り出して行う。
「精巣を覆っている白膜を切開して、精子を形成する精細管を手術用顕微鏡(倍率5~40倍)を使ってつぶさに観察します。精子がいそうな精細管は『太い、白濁、蛇行している』という特徴があるので、それを特定して数十~100ミリグラム程度採取するのです」
精細管を採取したら、手術室内ですぐに精子の有無の確認作業に入る。
観察用顕微鏡(倍率100~400倍)をのぞきながら精細管を刻み、その内容物の中から見つけ出すのは胚培養士が担当する。精子が見つかれば、顕微授精のために凍結保存する。
手術時間は30分~2時間程度。費用は入院(1泊2日)含め、40万~50万円ほどだ。
「また、当院では採卵に合わせてMD―TESEを行い、凍結せずに新鮮な精子で顕微授精する『fresh―TESE―ICSI』も行っています。いずれも高度な最先端治療なので、実施する施設は限られています」