10分も記憶を維持できない人が昨日のことを覚えていた
もし山崎さんが、母親と折り合いが悪くなっていたり、介護がルーティンになって、2人に親子の会話がなく、息子なのにヘルパーのような存在になっていたら、介護されても母親から「息子」という認識は消えていくだろう。あるいは障害によって、若かった頃の息子の記憶が現れ、中年になった山崎さんを認識できないのかもしれない。
それでもいいのではないか。忘れたからといって「なんで俺のことを忘れる!」と指摘すれば、山崎さんは「怖い人」になって、母と子の関係性はますます薄くなる。
反対に、息子の顔を忘れても、やさしく声をかけていれば、少なくとも温かみは伝わって「身近で大切な人」と認識してもらえるはずである。
その後、山崎さんは居直り、「息子の雄さんに似てるねぇ」と言われると、「おれも雄二って名前ですから」と笑い返しているそうである。