抗がん剤の副作用で心臓疾患を発症するケースが増えてくる
オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤の登場も含め、近年の抗がん剤は飛躍的に進歩しています。ただし、よく効く抗がん剤というのは、それだけ副作用も起こりやすいという側面もあります。とりわけ、がんが多い高齢者はそもそも臓器が弱っている場合がほとんどなので、抗がん剤を長期に使用するとなおさら副作用が出やすくなり、心臓や腎臓に悪影響が及んでしまうのです。
実際、抗がん剤治療中に心臓にトラブルを起こして生活制限を受けたり、腎臓に障害が出て人工透析が必要になってしまうケースもあります。そうなると、命は救われたもののQOL(生活の質)が著しく落ちてしまったという状況になりかねません。
そうした新たな問題が増えてきたこともあって、自身ががんになった経験がある循環器医らがグループをつくり、がんと心臓疾患についての研究や治療法を検討しています。しかし、まだ十分とはいえない段階で、がんと心臓疾患の両方についての深い知識と豊富な経験がある医師は極めて少ないのが現状です。もともと、循環器医はがんに対する造詣は深くありませんし、がん専門医は循環器系は専門科に任せればいいという傾向があっただけに人材が不足していて、エアポケットのような状態になっているのです。