80歳の母親は助かる可能性があった胃がんの手術を受けず…
母と私は大ゲンカになりました。私は手術して欲しかったのです。生きていて欲しかったのです。それでも、母は頑として「手術はしない」と言い張りました。
担当医は「今なら助かる可能性がある」と言っておきながら、どうしてもっと強く、強く手術を勧めてくれなかったのでしょうか? あの「今なら助かる」の言葉が私には忘れられません。「あなたの命だからあなたが決めてください」ではなくて、「手術しましょう。今なら助かります。高齢でリスクはありますが、出来るだけ頑張ります」と、どうしてそう言って下さらなかったのでしょうか?
母が自分で決めたことで、今さらこうなってしまっても仕方ありません。でも、ケンカになったあの時、母は「私の命なんだ。担当医もあなたの命と言った。だから私が決める」と言っていました。
私は「母の命は母ひとりの命ではない。一緒に暮らしてきた家族の命でもあるし、私の命でもある」と言ったのです。でもその後、数日は口を利かなくなりました。
担当医は、手術のメリットもデメリットもすべて話してくれたと思います。でも、患者にはすべてが分かるはずはありません。そのことで文句を言っているのではないのです。