今日は抗がん剤を打てるだろうか…がん患者の複雑な気持ち
待合室のテレビでは、「○○県でコロナ患者が2人見つかった」とか、蔓延している話、今ごろになってからの水際対策?……といったコロナの報道ばかり続いています。
ようやくAさんが呼ばれました。消化器内科のP医師が担当です。
「お元気ですか? 白血球数は2600でしたので、今週は抗がん剤は休みます。来週の予約を入れておきます。また、どうぞ」
これで終わりです。3分にも満たない、まさに“2分診療”でした。会計を済ませ、Aさんが病院を出たのは11時半でした。病院の近くの駅に戻り、改札の中にある食堂で朝・昼食を兼ねて月見うどんを食べました。
帰りの電車は座れました。Aさんはあれこれ考えます。
「抗がん剤は打てなくて、ただすごすご帰るしかない。今日、仕事を休んだのはなんにもならなかった。元気なときならイライラ怒っていたと思うのだが、怒る気にもならない。3カ月前、CT、MRI検査で膵臓がんと診断されたけれど、俺の腹には本当に膵臓がんがあるんだろうか。今週、抗がん剤を休んでがんは進行しないのか? 抗がん剤のスケジュールは2週治療して、1週休む。これをどれだけ繰り返すのか……。『まあ、どうにでもなれ』と思っても、そうもいかない」