コロナ禍の影響は? 1カ月のがん手術延期で100人中1人が死亡
新型コロナウイルス感染症の感染拡大が止まりません。軽症者の多いこの病気ですが、入院患者が増えて医療が逼迫すると、いろいろな影響が出てくる可能性があります。
病院で院内感染が起こると、病棟を閉鎖したり、スタッフが休んだりしないといけなくなって、予定されていた外科手術なども中止や延期になってしまいます。
実際に今年の夏に腎臓のがんの手術を予定されていたクリニックの患者さんは、病院で院内感染が起こったために2カ月の手術延期となってしまいました。その患者さんのがんはそれほど悪性度の高いものではなく、転移などもなかったので大きな問題にはなりませんでしたが、もし進行の速いものであったら、手術が延期されることで、取り返しのつかない結果になってしまう可能性もあります。
今年の「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」という一流の医学誌に、こうした問題を解析した論文が掲載されました。これまでの臨床データをまとめて解析したところ、多くのがんにおいて、当初の予定より手術が1カ月延期されると、患者さんの死亡リスクが増加することが確認されました。たとえば悪性度の高い乳がんでは、1カ月の延期により100人に1人がそのために死亡する、と計算されたのです。
新型コロナウイルス感染症の怖さは、こうした意外なところにも潜んでいるのです。