重症化を防ぐ 新型コロナの治療に「抗生剤」が有効な可能性
「IgAは、特定のウイルスや細菌だけに反応するのではなく、多くのウイルスや細菌に反応します。ヒトの免疫機能のフロントラインに位置しているといえる物質で、クラリスロマイシンはその産生を促す作用があるのです」
■宿主プロテアーゼの活性を阻害する
新型コロナウイルスがヒトの細胞に侵入するとき、自身の表面にあるスパイクタンパク質(Sタンパク質)という突起を鍵として使う。鍵穴に当たるのがヒトの細胞膜上にある「ACE2受容体」で、自身の鍵を細胞側の鍵穴に合わせて吸着する。さらに細胞内に侵入する際は、宿主側のプロテアーゼというタンパク分解酵素を利用している。活性化した宿主プロテアーゼによって、標的となる細胞の受容体に結合したSタンパク質が切断されると、ウイルスと細胞の膜との融合が誘導され、ウイルスが細胞内に侵入し感染が成立する。
「海外の研究では、クラリスロマイシンが宿主プロテアーゼの活性部位に結合し、プロテアーゼの活性を阻害してウイルスの増殖を防ぐ可能性が指摘されています。とりわけ、新型インフルエンザ治療薬のアビガンや吸入ステロイド薬のシクレソニドとの併用や、抗マラリア薬のクロロキンとの併用で大きな治療効果があったと、国内外で症例報告があります」