養老孟司が心筋梗塞に 医者嫌いが頼りにする「身体の声」
その中身は共著に譲るとして、興味深いのは受診のキッカケです。養老先生は、「『身体の声』は病院に行くことを勧めているようでした」とつづっています。「身体の声」の正体となる症状は、1年で15キロの体重減少のほかは元気がない、やる気が出ないといった不定愁訴で、特に「受診日の直前3日間はやたらと眠くて、猫のようにほとんど寝てばかり」だったそうです。
80代でヘビースモーカー、がん検診を受けたことがないことから、私がまず注目したのはがんでした。がんは、正常細胞に必要なエネルギーを横取りして増殖するため、進行すると痩せます。しかし、喫煙による軽い肺気腫を認めたものの、がんはなし。
一方、心電図には、わずかに心筋梗塞を示す波形が見られたため、心臓の血管を養う冠動脈の血管造影検査を追加したところ、心筋梗塞と診断されたのです。
一般に心筋梗塞は、強い胸の痛みがあります。それがなかったのは、糖尿病だったためです。その点は先生も自覚していましたが治療をしていなかったため、合併症のひとつである神経障害を起こし、痛みがマヒしていたと考えられます。