ヤマカガシには毒を注入する「毒牙」がなく毒の被害は珍しい
ヤマカガシが専門家のあいだで毒ヘビと認識されるようになったのは1970年代に入ってからのことです。それまでは無毒ヘビと思われていました。
北海道と沖縄・奄美を除く日本全国の農村や山林に広く生息しており、カエルやドジョウなどをエサにしています。おとなしいヘビで、手で掴んだりしない限り、咬かまれることはありません。また咬まれても大半が無毒咬傷であるため、毒ヘビと思われてこなかったのです。しかし彼らは2系統の毒を持っており、その点でマムシやハブよりユニークです。
■エサとなるヒキガエルの毒を再利用
ひとつは「頸腺毒」と呼ばれるもので、頸の後ろの皮下に並んでいる頸腺という器官から、毒液を噴射することができます。かなり広範囲に飛び散るので、人が無造作に掴んだりすると、眼に入る危険があります。すると激しい痛みに襲われ、涙が止まらなくなり、視力が一時的に低下します。きれいな水でよく洗って炎症を抑える目薬をさせば、1日か2日で回復します。
頸腺毒の存在は以前から知られていましたが、それだけで毒ヘビと呼ぶわけにはいきません。ちなみに毒の成分はブフォトキシンというステロイド系の物質です。もともとエサとなるヒキガエルが持っている毒で、そのまま再利用しているのです。そのためヒキガエルがいない地域のヤマカガシの頸腺分泌物には毒が入っておらず、危険はありません。