ヤマカガシには毒を注入する「毒牙」がなく毒の被害は珍しい
毒の主な作用は血液凝固機能の破壊です。われわれ哺乳類の血液には、ケガなどの出血を止めるために2つの凝固システムが備わっています。ひとつは血小板で、血管が損傷を受けるとそこに集まって塊を作り、止血します。もうひとつは繊維素と呼ばれる仕組みで、血液中のフィブリンというタンパク質が繊維状に固まって、赤血球などを巻き込みながら血栓を形成して傷口を塞ぎます。マムシ毒は血小板を減少させる作用がありますが、ヤマカガシ毒はフィブリンを減らすことでより出血しやすくします。
■毒が回り出血が止まらなくなるのは10時間後
ヤマカガシに咬まれて毒が入ったとしてもあまり腫れないうえに、痛みも強くありません。傷口の出血もすぐに止まります。さらに厄介なことに、咬まれてから毒が効き始めるまでに数時間~か10時間以上のタイムラグがあります。その頃にはすでに血液凝固システムが壊れつつありますから、傷口からまた出血が始まり、しかもいつまでも止まりません。歯ぐきからも出血し始め、皮下出血が起こって体のあちこちが紫色になってから、あわてて病院に行く人も少なくありません。