新型コロナ治療の新たな選択肢「カクテル療法」の期待と課題
抗体製剤には一般的に「効果が長く続く」という特徴があるという。薬に含まれている抗体は体内で分解されにくいため、それだけ長い時間、血流に乗って全身を循環するためだ。1日に2回あるいは3回投与する必要がなく、1カ月以上にわたって効果が続くタイプもある。また、ウイルスを細胞に取り付かせないため、感染予防としても使えるといわれている。
さらに、海外の臨床試験では変異株にも効果があると報告されている。新たな治療として大いに期待できそうだが、一方でまだ課題もある。
■大量生産や精製が難しく高額に
抗体製剤は生体が作る物質を使うバイオ医薬品=生物学的製剤と呼ばれ、従来の化学的に合成された医薬品とは異なる。そのため大量生産が難しく、薬価が高額で1本10万円を超えるものも珍しくない。
「今回のカシリビマブとイムデビマブは『モノクローナル抗体』と呼ばれる人工的に作られた抗体です。まず、狙った効果を発揮する単一の抗体を作る遺伝子を、細胞に導入します。次にそれらの細胞の中から目的の抗体をきちんと作り出す優秀な細胞を探し出し、その細胞のクローンを大量に作り、培養した細胞に抗体を作ります。今回は2種類の混合ですから、そうした過程もそれぞれ必要になるのです。細胞は24時間に1回しか分裂しないので、クローンを培養するのもそれだけ手間がかかります。化学的に物質を合成するだけで作れる従来の医薬品に比べると、大量生産が難しく、精製も難しいため価格もはね上がるのです」