熱中症と血液ドロドロを防ぐ こまめな水分摂取+αが大切
総務省消防庁の発表によると、今年7月26日から8月1日までの熱中症で救急搬送されたのは全国で5831人(速報値)。昨年同時期の数を圧倒的に上回る地域がほとんどで、東京都では昨年同時期116人に対し、3倍超の364人だ。熱中症対策で心掛けるべきことを、東京慈恵会医大付属病院栄養部の赤石定典氏(管理栄養士)に聞いた。
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「熱中症対策には、一にも二にもこまめな水分補給。日頃は胃腸を弱らせないために常温の水やお茶、汗をかいた際は吸収率の良い冷たい水やお茶がいいでしょう。『熱中症対策=スポーツドリンク』と考えている人がいますが、よほどのことがない限り、スポーツドリンクは必要ありません」
夏の暑い時期、汗をかいてリスクが高くなるのは熱中症だけではない。汗で体の中が水分不足になって「ドロドロ血液」になり、脳梗塞や心筋梗塞も起こしやすくなる。
スポーツドリンクにはナトリウム(食塩)と糖分が含まれている。
「問題は糖分量です。量が多すぎる。糖分量の取り過ぎはドロドロ血液を招きかねない。屋外でスポーツをして大量に汗をかいたときに飲む分にはいいですが、それ以外、私は水や麦茶で十分対応可能だと考えています。子供の部活動でも、スポーツドリンクや清涼飲料水を多飲して起こるペットボトル症候群を引き起こすとして、スポーツドリンクを禁止しているところもあります」
野菜と果物が血糖値の急上昇と活性酸素の過剰産生を抑制
熱中症、ドロドロ血液対策で積極的に取るべきは、夏野菜と果物だ。
「夏野菜、果物ともに、ほぼ水分。夏は冷たいそうめん、うどんなど麺類中心の食生活になりがちで、どうしても糖質の摂取量が増えてしまいます。夏野菜や果物で水分を取ると、汗で流れたビタミン、ミネラルを補給できるほか、食物繊維が取れるので糖質の取り過ぎで血糖値が急上昇するのを抑制できます。何よりいいのが、抗酸化物質も取れることです」
夏は紫外線が強く、活性酸素を増やす。私たちの体には活性酸素から自己を守る活性酸素防御機構が備わっているが、活性酸素の産生が過剰になると、老化を促進し、生活習慣病を起こしやすくする。
「ビタミンACE(エース)と呼ばれるように、ビタミンではA、C、Eが抗酸化力に優れているため積極的に取りたい栄養素です。旬の野菜や果物からは、抗酸化物質であるポリフェノールも摂取できます。ビタミンACEやポリフェノールは野菜や果物の皮に豊富なので、皮ごと食べられるものは、皮も食べると理想的です」
仏国立保健医学研究機構の研究では、6万4223人の仏人女性を15年間追跡。参加者の抗酸化物質量を解析したところ、抗酸化物質を多く摂取している群は、少ない群に対し、2型糖尿病のリスクが最大27%低下したという結果が出た。
糖尿病で血糖コントロールが悪いと、汗腺の働きが悪くなり汗をかきづらく、尿に糖とともに水分が出やすいため、熱中症リスクが高い。より意識して野菜や果物を取るのがいいかもしれない。
「果物のカロリーや糖質を気にする人もいますが、果物の中ではカロリーが高く糖質量が多いバナナですら、1本分(可食部100グラム)当たり、カロリー93キロカロリー、糖質量21.4グラム。ご飯は茶わん1杯(150グラム)でカロリー234キロカロリー、糖質57.2グラム。カロリーが低く糖質が少ないキウイやスイカ、リンゴなら、ご飯を食べるよりも、カロリー、糖質の摂取量をもっと抑えられます」
果物は、深夜を除いて、朝昼晩どの食事のタイミングで取ってもいい。
熱中症も血液ドロドロも、対策を誤れば命に関わる。甘く見てはいけない。