空腹ホルモン「グレリン」はがん治療と大きく関係している
1カ月後の外来診察では、Dさんは頭をかきながら診察室に入ってきました。スナック菓子はかなり控えたと言っていましたが、体重は減っていません。私はちょっと“脅し”のつもりで、「半年経って3キロ以上痩せなければ、外科に頼んで胃の手術をしてもらいましょう」と言ってみました。すると、Dさんは少し驚いたように「胃の手術で痩せるのですか?」と聞くのです。
そこからこんなやりとりが続きました。
「胃を小さくすれば、食べる量も減るでしょう。それからね、胃の手術をすると食欲が減る効果もあるんですよ。グレリンという胃から出る空腹ホルモンがあって、胃の手術でグレリンを分泌するところを切除すると、食欲が減る効果があるんです」
「分かりました。でも、手術はしません。スナック菓子はきっぱりやめます」
「肥満は、内臓脂肪がたまって肝臓にも腎臓にも肺にも良くありません。コロナ感染でも肺炎がひどくなりやすいのです」 その後、Dさんは真面目に外来診察を受けに来るのですが、なかなか痩せません。普段からもっと歩くことや、定期的な運動を勧めています。