新型コロナ治療で使われるステロイド薬は早期に使うと逆効果 医師が解説
「デキサメタゾンは、もともと重症感染症や間質性肺炎の治療に使われている薬で、過剰な免疫反応や炎症を抑制する作用があります。新型コロナ感染症で重症化した患者の死亡率を下げることが報告されていますが、一部の医療機関では、治療早期から使われるケースがありました。ただ、ステロイド薬は免疫反応を抑える働きがあるため、最近になって、体内のウイルス量が多い初期に投与するとウイルスが減るスピードが落ちてしまうことがわかってきました。そのため、ウイルス量がある程度まで少なくなった段階で使わないと、逆に症状を悪化させてしまう危険があるのです」
実際、千葉大学の研究チームは「ステロイド薬を抗ウイルス薬より先行して使用すると、呼吸状態が悪化する可能性がある」という研究を米科学誌に報告している。
「初期にステロイド薬を使うとコロナウイルスが検出されなくなるまで15~20日ほどかかり、回復が遅れてなかなか退院できなかったり、自宅療養に切り替えられず転院を余儀なくされるケースが多く見られます。当院では、抗原量を計測してウイルス量が50ピコグラム/ミリリットル程度に減った段階でステロイド薬を投与しています。一般的にウイルス量が減る発症7~10日目でも、ウイルス量が多い患者さんがいるためです。ウイルス量の減少を検査できちんと確認してから投与することによって、平均の入院期間が5日と半分以下になり、ほぼ全員が目立った後遺症なく社会復帰されています」