岸田政権が推し進める「国民皆歯科健診」にはこれだけの課題が
国民皆歯科健診が1年に1回で内容も簡易的となれば、それのみでは十分な効果が期待できない可能性があるのだ。
かといって、期間を半年に1回、内容も一般的な歯周基本治療の検査と同程度にしようとしても、高いハードルがある。
「施設によって違いはありますが、当院では1人につき1時間かけて歯周病の検査を実施しています。現在、日本では専門的な処置ができる歯科衛生士が不足していて、歯科医院の多くは慢性的な人材不足です。国民皆歯科健診が全額公費負担になって診療報酬の点数が低いとなった場合、歓迎する歯科医院は少ないと考えられます。実施のペースや内容に加え、専門職の人材確保や費用の問題について、しっかり議論する必要があります」(前出の歯科医院院長)
現在、歯科健診は1歳半、3歳児、学校に通う高校生まで義務付けられているが、大学生や社会人は対象になっていない。また、自治体によっては40歳から10年に1度の歯周病疾患検診を実施しているが、受診率は5%程度と低く、過去1年に歯科健診を受けた人も52.9%にとどまっている。
国民皆歯科健診をきっかけに一人一人の口腔ケアに対する意識が高まり、その後は定期的な歯のメンテナンスに取り組むようになれば、大きな意義があるといえる。ただ、そのためにはクリアしなければならない問題があるのが現状のようだ。