岸田政権が推し進める「国民皆歯科健診」にはこれだけの課題が
口腔ケアは全身の病気の発症や重症化を予防し、ひいては膨らみ続ける医療費の削減にもつながる。すべての国民が定期的に歯科健診を受ける制度ができれば、たしかに意義はありそうだ。
■回数や内容はどうなる?
しかし、この制度のみではしっかり機能するかは疑問が残るという。
「国民皆歯科健診の具体的な内容はまだ何も決まっていない段階ですが、仮に1年に1回だけ単発で健診を受けたとしても、それほどの恩恵は見込めない可能性が高いと思われます。歯のメンテナンスは、口腔内の状態に応じたスパンで定期的に続けることが重要だからです。口腔内の状態が安定している人であれば、メンテナンスは半年に1回程度で問題ありませんが、一般的には3カ月に1回、状態がひどい人は1カ月に1回ペースで受けてもらうのが望ましいケースもあります」(前出の歯科医院院長)
また国民皆歯科健診が実施された場合、検査内容が不十分になる懸念もあるという。
「すでに、公費で賄われる『妊産婦歯科健康診査』や『成人歯科健康診査』といった歯科健診が行われていますが、どちらも一般的な『歯周基本検査』に比べ、検査項目の数や種類が少ないのが現状です。たとえば、歯周基本検査で行う歯周ポケットの深さの計測は、すべての歯を対象として1本につき6カ所を測ります。それが妊産婦歯科健診や成人歯科健診では、いくつかの歯の部分的なポケットの深さを計測すればよいとされているのです。また、追加で行うレントゲン検査では歯周病による骨吸収(歯槽骨の溶解)の度合いなどを確認できますが、妊産婦歯科診査や成人歯科診査ではレントゲン検査は行われません。それらの健診で来院された患者さんにそうした内容を説明すると、保険診療で出来る歯周基本検査の追加を希望されるケースが多い」(前出の歯科医院院長)