90歳のがん患者「長生きの家系なので治療しなくてもいいだろうって」
患者さんが自分の病気と向き合うという行為は、当然ながら患者さんにしかできません。健康だった時には想像もしなかったことに遭遇し、混乱したり悲嘆に暮れたりする日もあるでしょう。
またこれまでの人生を落ち着いて振り返り、自分の強さや弱さに気付いたり、ご家族の愛に改めて感謝の念を抱き穏やかな境地になる方も。その患者さんのキャラクターによって大きく異なるものです。
病気は患者さんにとって、自分の人生や生活をいやが応でも振り返る大きなきっかけになるものなのです。そんな患者さんに寄り添い、自宅でともに病気と向き合うお手伝いをするのが在宅医療の本分と心得ています。
90歳の男性は、膀胱と肝臓のがんを患っていました。通院しながら化学療法を5回終了。6回目の直前、自宅で転倒し圧迫骨折。それにより入院したため、化学療法は断念したとのこと。
「骨折は良くなったけど帯状疱疹になったんですね」(私)
「そうです」(妻)
「わかりました。骨折の方は治ってきたと思うんですけど、帯状疱疹や血栓の方でも困りごとがあれば、私たちでお薬を出せますので」(私)