コレステロール降下薬で肝臓がんを予防? 20万人の解析から判明
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれているように、その機能がある程度低下しても、痛みなどの症状が出ないことが多く、検査をしてみたら重症の状態だった、ということも多いのが特徴です。
その進行した状態は肝硬変と呼ばれ、肝臓の機能が高度に低下して、その名前の通り肝臓は硬くなり、お腹に水がたまったり、黄疸(おうだん)と言って皮膚が黄色くなったり、食道から出血するなどの症状も出ます。肝硬変ではまた、肝臓がんも増加することが知られています。肝臓を悪くする原因には肥満やお酒の飲み過ぎなど、生活習慣で改善可能なものもありますが、体質などそれでは改善の難しいものもあります。肝臓病の何か良い予防法はないのでしょうか?
注目されている薬のひとつが、コレステロール降下剤の「スタチン」です。スタチンはコレステロールを合成する酵素の阻害剤で、強力にコレステロールを下げる作用があり、それ以外にも体の炎症を抑えたり、肝臓が硬くなる原因である繊維化を抑えたりと、肝臓に良い作用も多くあることが分かっています。今年の米国医師会関連の医学誌に掲載された論文によると、20万人以上の大規模な健康情報を解析した結果として、スタチンの使用はその後の肝臓病のリスクを15%、肝臓病による死亡のリスクを28%、肝臓がんのリスクについては42%も低下させていました。コレステロールの薬は、肝臓の薬でもあるのかもしれません。