ピークはこれから、恐ろしい 「熱中症」を防ぐには「プール熱中症」にも要注意!
熱中症対策にはヨーグルト
今夏は例年以上の猛暑が予想されており、全国各地で35℃を超える猛暑日が続いている。例年以上に「熱中症」患者が急増している。それだけに「熱中症」にならないよう正しい知識を身につけ、しっかりとした対策を今から考えておきたいものである。
■今夏はさらに危険性が高まった!?
7月下旬から8月上旬にかけて暑さのピークを迎える今、
「今年は大変ですよ。熱中症で倒れる人が例年以上に多くなって、救急車が足りなくなってしまうようなことが起こっても決して不思議ではありません。今からとても心配です」
と不安を口にしているのが熱中症予防の専門家である枚方療育園医療福祉センターさくらの服部益治院長だ。服部院長がなぜそんな心配をしているのかといえば、ここ3年間、新型コロナウイルスの感染拡大で人々が自粛生活を強いられてきたからである。
「コロナ禍の影響で人々の体力、特に筋力が落ちて体の水分を保つ機能が低下している、つまり、脱水症に陥りやすい体になってしまっているのです。加えて、ラニーニャ現象による地球温暖化が進んで生命維持が困難なほど環境が悪化し続けていることも熱中症の増加に拍車をかけています。本当に心配な状況ですね」(服部院長)
■熱中症予備軍「かくれ脱水」
熱中症は高温の環境下で体内の水分やミネラルのバランスが崩れたり、発汗や皮膚からの放熱といった体温の調整機能がスムーズに働かないようになることで体内に熱がこもり、体温が上昇して発症する病気。初めのうちは、めまいや体のだるさ、吐き気を覚え、その時点で適切な処置をすれば問題はないが、遅れると痙攣や意識障害を起こし、最悪の場合は死に至るというから恐ろしい。
熱中症予防を考える上でぜひ知っておきたいのが「かくれ脱水」と呼ばれる状態だ。これは体内の水分の量が減っても脱水症の症状がはっきり出ず自覚症状がない、熱中症のリスクが高まっている状態であり、つまり、脱水症一歩手前の熱中症予備軍ともいえる「かくれ脱水」の状態を避けることで熱中症を防ぐことができるというわけだ。服部院長によると「かくれ脱水」かどうかをチェックするには手の甲をつまんでみることが有効だとか。
「皮膚をつかみ上げて下した時に皮膚は戻るものの、その戻りが悪いというのが最も分かりやすいサインです。今日は戻りが悪いと思ったらその時点で『かくれ脱水』に陥っている可能性があります」(服部院長)
ちなみに「かくれ脱水」を防ぐ対策としては「こまめな水分補給」と「食事」が大切で、のどが渇いていなくても1時間にコップ1杯を目安に水分を補給するようにすること、また、食事でも水分を補給できるので、できるだけ朝昼晩と3食きちんと食べるようにすることが肝心だ。
■見逃されがちな「プール熱中症」
さらにもう1つ、意外に知られていないのが「プール熱中症」だ。夏ともなるとプールで泳ぐのは心地よく、何よりの熱中症対策になると考える人も多いだろうが、プールで水泳中に熱中症を発症してしまうケースも決して少なくないのだ。
というのも、水の中では汗をかかないと思われがちだが、実は水中でも発汗や脱水があり、ここでも「かくれ脱水」が起こる可能性があるからだ。したがって水泳中であっても、こまめな水分補給を心がけること、それを忘れないようにすることが大切だ。
■ヨーグルトで熱中症を予防する
前述したように熱中症予防には、こまめな水分補給とともに食事をきちんと摂ることも大事だが、この時期、特におススメなのがヨーグルト。その点は服部院長も、
「乳たんぱく質と糖質を一緒にとることで、血液の材料となる『アルブミン』という乳たんぱく質の合成を促進してくれます。血液に水を取り込んで、血液量を増やす効果が期待できるのです。
ヨーグルトには、この両方の栄養素を含んでおり、さらに、筋肉をより強くする効果もあります。また、夏になると体調を崩して下痢や便秘になったり、食欲が落ちてしまう人が増えますが、そうなると腸の動きが弱くなり、自律神経の働きが乱れて熱中症を起こしやすくなります。ヨーグルトに含まれる乳酸菌は腸内にすむ善玉菌のエサになることで腸内の環境を整えてくれ、結果的に熱中症を予防してくれることになるのです」
と解説する。
熱中症は「脱水症状が潜んでいる人」「体力の弱い人」「暑さに慣れていない人」「日頃運動をしていない人」「汗をかきにくい体質の人」「病気の人・体調の悪い人」「我慢強い性格の人」「過度の衣服を着ている人」など誰にでも起こる。「自分は大丈夫」と考えることが何よりも危険だ。決して油断することなくこの「危機」を乗り越えたいものである。