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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

母親の死後、血糖コントロールが悪くなった父親をなんとかしたい

公開日: 更新日:

「父親は78歳。糖尿病で、30年近く薬を飲んでいます。母親が生きていたときは血糖コントロールが良かったんですが、半年前に母親が亡くなって以来、レトルト食品やスーパーの総菜が増えて、血糖コントロールも悪くなってしまいました」

 ため息をつくのは、神奈川県在住の40代女性。彼女が心配しているのは、糖尿病の進行が招く3大合併症もさることながら、認知症のリスクが高くなること。

 なお、糖尿病の3大合併症とは、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症を指します。神経障害では、悪化すれば手足が壊死し、切断に至ることがありますし、腎症では人工透析に、網膜症では失明に至る恐れがあります。最近では糖尿病の合併症はこれら3つの病気に限らず多岐にわたることが明らかになっており、認知症も合併症のひとつに入っています。

 さて、40代の女性は、お父さんに「せっかく血糖値がいい値だったのに、そんな生活じゃ、悪くなるじゃない!」と何度となく言っているそう。そのたび、お父さんからは「年だから。もう俺は仕方ないんだ」と返ってくるのみ。

 以前は朝晩と夫婦で散歩をしていたとのことですが、ひとりになり、その日課もなくなってしまいました。女性によれば「父親はもともと料理を作ったり、体を動かすのが嫌いじゃない。だけど母親がいなくなって、いろんなことにやる気を失ってしまったよう」とのこと。

 実家から車で30分ほどのところに住んでいる女性は、1週間に2、3回実家に戻り、おかずを作り置きしています。

「こんなに私が頑張っているのにと思うと、カッとして怒鳴ってしまうこともあるんです。すぐ自己嫌悪に陥るんですが」(女性)

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