著者のコラム一覧
黒﨑弘正江戸川病院放射線科部長

江戸川病院放射線科部長。1995年、群馬大学医学部卒。医学博士。日本専門医機構認定放射線専門医、日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医。JCHO東京新宿メディカルセンターなどの勤務を経て2021年9月から現職。

放射線治療の実例…高齢でも「オリゴ転移」なら長期生存も

公開日: 更新日:

 前回、少数の転移である「オリゴ転移」についてお話ししました。今回は実際の体験をお話しします。患者さんは89歳のときにPET検査などで左肺上の肺がんと肝臓の転移と診断されました。実際には高齢なので気管支鏡で組織診断はされていない“蓋然診断”の肺がんでした。

 大学病院では年齢的に治療不可能、陽子センターでも転移があるので治療はできないといわれ、江戸川病院なら治療してくれるかも……とのウワサを聞きつけていらっしゃった患者さんです。

 症状はなく、画像ではたしかに左肺の腫瘍と、肝臓の転移のひとつでオリゴ転移でも初発時にすでに転移巣が存在する「synchronous oligometastases」(編集部注:原発巣が制御されていない小数個の再発/転移状態のこと)と診断しました。そこで、それぞれ放射線治療を行ったところ、腫瘍マーカー「CEA」は低下し、2年以上たった今も3.0(ng/ml)と基準値以内、91歳になった分の体力などの低下はありますが、大きな変動なく定期的に私の外来を受診してもらっています。


 このように、放射線治療は高齢であっても対応できるだけでなく、遠隔転移があってもオリゴ転移であれば無症状で長期生存できる可能性を秘めた治療法といえます。逆にオリゴ転移が1個でなく、10個もあったら私もこの患者さんの治療を引き受けなかったでしょう。いずれにせよ「転移があったらもうダメ」という短絡的な思考をする時代は過ぎ去ったようです。

【連載】教えて放射線治療 ドクター黒﨑に聞く

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇