心房細動の新治療「パルスフィールドアブレーション」の期待と課題
ひとつは、心臓の壁に穴を開けてしまう心穿孔により、心臓の周囲に血液が漏れ出す「心タンポナーデ」です。血圧や心拍数が不安定になるうえ、大量の血液が急激にたまると命の危険もあります。ほとんどは細いチューブを挿入して血液を吸い出すドレナージによって自然に閉鎖しますが、外科手術が必要になるケースもあります。
ほかにも、心臓の心房と心室の間にある正常伝導路を傷つけてしまうと「房室ブロック」という合併症を起こすリスクがあり、重度ではペースメーカーを植え込む処置が行われます。
「食道障害」が起こるケースもあります。食道は心臓の真後ろを通っているため、食道の上に位置する心房筋を焼灼する際に熱が食道まで伝わり、ヤケド状態になってトラブルを起こします。また極めてまれですが、食道まで穴を開けてしまう食道穿孔により、死亡する可能性もあります。
カテーテルアブレーションによる合併症の発生率は全体で3.4%という報告もあり、決して多くはありません。しかし、万が一、起こってしまうと大がかりな治療が必要だったり、QOL(生活の質)を大幅に低下させてしまい、なんのために治療したかわからなくなってしまいます。