2型糖尿病なら注目したい 慢性腎症リスクを低下させる飲み薬
「腎臓には血液中の老廃物や塩分をろ過して、尿として体外に排出する働きがあります。その中心が毛細血管の塊である糸球体で、それに連なるのが尿細管です。ここではろ過した尿(原尿)に含まれるブドウ糖などの栄養素やナトリウムやカリウム等の電解質など、ヒトに必要なものを再吸収します」
糸球体や尿細管の細胞表面にはミネラルコルチコイド受容体(MR)があり、副腎から分泌されるアルドステロンと呼ばれるホルモンと結合することで、血圧調整やミネラルバランスを調整している。
ただし、塩分過多になったり、血糖値が上がったり、アルドステロンの働きが過剰になったりすると、体の中に塩分が過剰に貯留して血圧を上昇させ、慢性炎症や線維化による臓器障害を起こす。
逆に言えば、飲み薬のフィネレノンが先にMRと結合することで、アルドステロンの働きを阻害すれば、尿細管での再吸収が減り血圧の上昇が抑えられ、血糖値も下がり、腎臓も保護できるというわけだ。
「じつはこれまでも同様の薬はあったのですが、MRは尿細管以外の臓器の細胞表面にも点在しているため、薬によっては腎臓以外の臓器に作用して女性化乳房、高カリウム血症といった副作用が出ることがありました。フィネレノンは腎臓のMRにより選択的に働くうえ、薬の構造がステロイドのような骨格構造ではないため、副作用が起きにくく、腎臓の線維化などが防げるというわけです」