最上悠
著者のコラム一覧
最上悠精神科医、医学博士

うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

アニメやマンガだけに惹かれる…「一次感情不全」に多い言動

公開日: 更新日:

 一方でこうした一次感情は、失恋や挫折など都合が悪いものほど、それを感じることに強烈な苦痛を伴うために、ついつい人は目を背ける「回避」というパターンで感じることから逃げようとします。厄介なのはこうした一次感情にきちんと向き合わず、無理に抗い続けたり逆に逃げてばかりいると、他の動物には見られない、人間特有の「二次感情」が大きく膨らんでしまうことです。

 具体的には「羞恥心」「罪悪感」「虚無感」「劣等感」「自己嫌悪」「怨恨」などといった犬や猫などの動物には感じられないどころか、人間同士でも他人からは理解されにくい「社会的な人工感情」とも呼ばれるものです。また、一見、一次感情に見えてもそれが極端な場合、たとえばちょっと肩がぶつかっただけで相手にキレて殴りかかる、といったTPOに合わない膨らみすぎた喜怒哀楽も二次感情です。

■激しすぎる怒りに潜む「困った一次感情」

 よく不登校ひきこもりの方の中には、ちょっとしたことで激しくキレ出す人がいますが、「怒っている人は、困っている人」という言葉があるように、「激しすぎる怒り」は「辛すぎて直視できない困った一次感情」からの回避なのです。だから、「何、逆ギレしてるのよ」などと、本人の困りごとに寄り添うことなく正論で叱るだけでは、怒りという捌け口を失い、これまで必死に目を背けてきた一次感情に直面せざるをえなくなるため、必死なって「もっと怒る」ことで回避を堅持し続けようとするわけです。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    巨人入り若林楽人「4番気取り」なら新天地でも“塩漬け”不可避…打撃に求められる意識改革

    巨人入り若林楽人「4番気取り」なら新天地でも“塩漬け”不可避…打撃に求められる意識改革

  2. 2
    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

  3. 3
    大谷への「アジア人差別感情」は球宴ファン投票にも表れ…問題の根は深く心配な今後

    大谷への「アジア人差別感情」は球宴ファン投票にも表れ…問題の根は深く心配な今後

  4. 4
    3選狙う小池都知事は情勢調査「一歩リード」も圧勝遠のき焦り…街頭演説も聴衆スカスカ

    3選狙う小池都知事は情勢調査「一歩リード」も圧勝遠のき焦り…街頭演説も聴衆スカスカ

  5. 5
    マイナンバー「1兆円利権」山分け 制度設計7社と天下り官僚

    マイナンバー「1兆円利権」山分け 制度設計7社と天下り官僚会員限定記事

  1. 6
    巨人が「同ポジション」緊急トレードで企む真の狙い…松原を西武に放出、若林を獲得

    巨人が「同ポジション」緊急トレードで企む真の狙い…松原を西武に放出、若林を獲得

  2. 7
    高橋一生「ブラック・ジャック」高視聴率も続編困難か…永尾柚乃“完璧ピノコ”再現に年齢の壁

    高橋一生「ブラック・ジャック」高視聴率も続編困難か…永尾柚乃“完璧ピノコ”再現に年齢の壁

  3. 8
    小池知事は都知事選TV討論すべて拒絶…蓮舫氏が街頭演説で暴露し「逃げないで」と訴え

    小池知事は都知事選TV討論すべて拒絶…蓮舫氏が街頭演説で暴露し「逃げないで」と訴え

  4. 9
    永尾柚乃はもはや子役にあらず …すでに「助演女優レベル」の納得エピソード

    永尾柚乃はもはや子役にあらず …すでに「助演女優レベル」の納得エピソード

  5. 10
    高橋一生「ブラック・ジャック」の不安材料? ドクター・キリコ=石橋静河にやはり疑問の声

    高橋一生「ブラック・ジャック」の不安材料? ドクター・キリコ=石橋静河にやはり疑問の声