アニメやマンガだけに惹かれる…「一次感情不全」に多い言動
この人工物である二次感情は、一次感情のように一度でも感じきれば、時間が経つと自然と消えていくというわけにはいかず、怖いのは一次感情を感じない限り、頭の中で環境ゴミのように一生消えないノイズとなって蓄積し続けるという点です。この脳内ノイズは、苦悩を生み出し続けるノイローゼの元となったり、コントロール不良な感情としてうつ病やパニック症のような精神疾患の原因となったり、自律神経失調などを通じて身体的不調にもつながっていきます。
同時に、マイナスの一次感情の回避が習慣化すると、プラスの一次感情の感度も鈍化していくため、健康的な喜びや達成感も感じられなくなり、前向きさや意欲が失われ、逆にゲームや反社会的行為、暴飲暴食、自傷行為といったスリリングでジャンキーな刺激でないと生きている実感が得られなくなるという現象を生じるようにもなります。「二次元」と言われるようなアニメやマンガ“だけ”に惹かれていくのも、リアルな一次感情の刺激されない“安全な心地よさ”を満たしてくれるからとも言えるかもしれません。
▽最上悠(もがみ・ゆう)精神科医、医学博士。うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。