日本の薬は大丈夫か?(4)今こそ薬を使わない医療への転換を
今後は中国もインドも人件費が上がっていることから、原薬の価格は徐々に値上がりするはずです。しかも日本は円安という問題を抱えています。対ドルだけでなく、人民元やインド・ルピーに対しても円の価値が下がり続けています。
数年前、半導体不足が問題になりましたが、そのとき「買い負け」という言葉をよく耳にしました。日本企業は相場に見合った価格を提示できず、必要な量の半導体を買えなかったわけです。それと同じことが原薬でも起こりそうです。
もっと薬価を上げるしかないのですが、それでは健康保険などの保険料をさらに上げなければなりません。そこで保険料を上げなくても済むように、できるだけ薬を使わない医療に切り替えていくことが大切になります。とくに日本では、高齢者のポリファーマシー(何種類もの薬を飲むことによる健康被害)が問題になり始めています。処方を増やすより減らすほうが、むしろ健康になれるかもしれません。いまはそうした見直しをする、いい意味での曲がり角に来ているのかもしれません。
=おわり
(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科・永田宏教授)