依存症の人が見えている世界(4)「もうやってないよね?」の声かけは逆効果
自覚がなく、感情で制御できる病気ではないため、依存症治療は難しい。医師に相談することを躊躇してはいけない。
「『専門家に相談していることが会社にバレたら』などと悩まれる方もいるのですが、悩むのは“相談後”にしてほしい。依存症は、専門家でも『どうやるとうまくいく』は分かりません。しかし、『どうやるとうまくいかないか』についてはたくさんの知見を持っています」
家族を含む周囲にいる人も同様だ。依存症の当事者に対し、やってはいけないことを知る。その最たるものが、「不安を助長するような言葉をかける」。
「『次にやったら離婚する』などの脅し、『もうやってないよね』といった確認、『あのときは大変だった』といった過去の蒸し返しはNGです。『このまま頑張ってね』などハッパをかけるような言葉も逆効果です。本人はマインドを変えようと前を向こうとしているのに、後ろを振り返らせるような言葉をかけてはいけない。依存症の治療とは、マインドや環境を変えることなのです」
知れば知るほど奥が深い依存症の世界。理解があるかないかで雲泥の差となりそうだ。 =おわり
▽山下悠毅(やました・ゆうき) 精神科専門医・精神保健指定医。日本外来精神医療学会理事。近著に「彼らが見ている世界がわかる 依存症の人が『変わる』接し方」。